ユール書殿

――黒き血鉄の匂い、隣佇む美しき白――

偽椿

生きてみたかった。仮令、其れがまやかしだとしても――。

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薬師の家系に生まれ、祖母亡きあとの医館を継いだ双子の兄妹、キラとサラ。剽軽な兄と、生真面目な妹。性格と性別を除けば、二人はよく似ていた。代々、男子が短命な家柄。医学を究めようとしてきた先祖らの努力も虚しく、未だ二十の歳を迎えられた者はいない。しかし、キラは十八の齢を健康なままで過ごし、妹と共に十九となっていた。

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「我が家系の男子は、二十の歳を迎えることができない」
 薬師として祖母の医館を継ぎ生計を立てるキラとサラは、よく似た男女の双子。慎ましく睦まじく日々を過ごしていた。十九歳を迎えた年、キラの体は死に向かい始めた。それは、原因も治療の術も不明な、一族に付せられた呪いとも言える病。
 薬師の家系に生まれ、祖母亡きあとの医館を継いだ双子の兄妹、キラとサラ。剽軽な兄と、生真面目な妹。性格と性別を除けば、二人はよく似ていた。
 代々、男子が短命な家柄。医学を究めようとしてきた先祖らの努力も虚しく、未だ二十の歳を迎えられた者はいない。しかし、キラは十八の齢を健康なままで過ごし、妹と共に十九となっていた。

〈登場人物〉

目次

  • 晩冬
  • 末枯時
  • 初春